2025年4月の竹内先生のコラム(お手紙)です。自筆を大切にしたいので、ファイルを張り付けています。
— 以下テキスト版 —
これは、東葛の会3月号に載っていたある母親が書いた文章の題名です。親と子の関係をどう考えたらよいのか参考になるのではと思い紹介します。 ( )は私が思ったことを書いたコメントです。
息子は中一の夏休み明日から頭痛、腹痛を訴え学校へ向かわなくなりました。行けない理由は「わからない」でした。担任からは「登校しなければ何もできない」と言われ、「行くように」と勧めました。明るい笑顔が消えて好きだった事も放り出し、日中もカーテンを閉め切った暗い部屋で布団にくるまってゲームをする日々、昼夜逆転し風呂にも入らず、ご飯も食べず、やせ細っていくばかり。(多くの子が同じような体験している)
私がその姿にイライラして、学校へ行かせようとすればするほど息子の態度は荒れぶつかる事が多くなりました。息子との信頼関係は崩れ、息子は私を遠ざけるようになり、私も孤独を感じ途方に暮れながら登校させようと躍起になっていました。(どの親も同じような経験をしているのでは)しかし、ある時、息子の「登校できない自分は邪魔なんだろうか」という言葉。私はショックを受けました。世間体を気にしている息子の気持ちを無視していたことを反省しました。そして息子に「大好きだよ」「生きていてくれるだけで本当に十分だと思っているよ」と繰り返し伝え、私の態度が息子を傷づつけていたことを謝りました。(学校へ行くか行かないかではなく、生きているだけでいいのだという親の気持ちは必ず伝わっていくと思っています。)
しばらくすると、私がリビングに居ても息子が現われるようになりました。始めは時々ほんの数分、テーブルに置いてあるパンやカップラーメンを取りに来ました。お風呂も楽しくなるようにと、色々な入浴剤を用意しておきました。(子どもは言葉ではなく何も言わなくても、お母さんの気持ちを感じとっていると思っています)数ヶ月すると部屋から出て来きて、おかずの味付けに意見を言うようになりました。向い合って一緒にご飯を食べるようになり、テレビのことで一緒に笑いながら話すようになりました。お風呂も入浴剤を毎日取変えて入るようになりました。話ができるときもあれば、スルーされるときもありました。息子の笑顔が増えるにつれて、私にも笑顔が増え、「学校へという当初の悩みは重要ではなくなり」「どうせなら楽しんでしまえ」という発想になりました。息子と博物館へ行くこともできました。(子どもは理屈ではなく、親の気持ちを感じ取る力を持っているのだと思っています)
中学校二年の秋、進路相談会に参加して「不登校でも高校受験できる」と知り、息子は「高校へ行きたい」とはっきり声で私に伝え受験することを決めました。勉強は塾に任かせて、私は口を出さないようにしました。「勉強しているの」と言いたくなる気持ちが頭をもちあげてくるときは、自分の好きなことに集中して焦る気持ちを抑えるようにしました。
休日はパンをつくったり、映画を見て感動したり、本を読んだりしました。そうすることで生まれ た心の余裕のおかげで、息子の言動に対して私自身をコントロールすることができました。息子の話もじっくり聞くことができました。(自分のことは気にしないで親は自分のしたいことをしている姿を見ると、子どもも安心できるのです。僕のことを信じてくれていると安心できるようになるのですね)
そして、現在、息子は高二になりました。息子はめまいなどの病状や不安になることが今も時々ありますが、一年の時よりも、二年の今の方が学校で過ごす時間を楽しんでいるようです。しかし、息子が休み始めれば、やはり、心配もします。このまま以前のようにこもってしまったらどうしようと焦りがむくむくと心の中に現れて来ます。その度、私は 「学校をどうするのかは息子が決めることなのだ」と自分に言い聞かせています。そして、今は息子との関係は優しいものに変わり、不器用ながらも息子が私を気遣ってくれたり、私も息子と過す時間が大切になっています。私を変えてくれた一つに「人生を車に例えるのならドライバーは、その人自身で、支援者は助手席に座るだけ」という言葉との出会いがあります。息子は自分の人生を自身で運転するのです。目的地もスピードも息子が決める、寄り道も出発も一時停止するのも息子次第。こうして息子を信頼し見守る方向にシフトすることを学びました。もうひとつ気づいたことに、不調を抱える子どもを支える『親も自身を大切にする必要がある』ということです。私が疲れ切った状態で、息子のためになにかしようとしても「なぜ、私ばかり大変なの」と不満が募りやすく、その結果、子どもにガミガミ言ってしまう自分がありました。そんな時、息子から「お母さんが、俺のためと自分の生活を変えようとすることが、逆に重荷になるんだ」と、言われたことがありました。そして不安が頭をもたげ始めたら、気晴らしたり、早めに心に余裕を持ったり、私と息子がお互いにつらく苦しむことを回避できるようになってきました。(このことを不登校の子どもが『お母さんは元気で留守がいい』という言葉で表現しています)
このお母さんは仕事をしているかどうかは書いてはいないのですが家に居ると子どもにガミガミ言ってしまう自分に気づきました。そして、それは逆に重荷になっているという子どもの言い分を理解することとしています。そのことで朝日新聞に”不登校離職”という記事が載っていました(3月1日付)その中「すぐに離職するのではなく、ステップ1、有休を2、3日取る。ステップ2、週1回の有休や時短勤務と提案しています。そして「いきなり仕事を辞めたら、子どもは 『自分のせいだ』と責めるかもしれない。実は仕事を続けていたほうが、親の健康が保てて子どもにも良い影響がある可能性もある。親が倒れないことが子どもにできる一番のことだと思います」と書いています。自分が休んでイライラ悩んでいる姿を見ていると子どもも自分のせいだと、さらに落ち込むことになりますがやはり子どもにとって「親は元気で留守がいい」と思うのです。親が元気なら、子どもはきっと前を向けるようになると思っています。