【まなざしの先に】
第7話:そっと咲くつながり
―― 目立たずに、でも確かに育まれる人と人との関係性。
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このコラムでは、日々の活動や地域での出会い、読書や小さな気づきを
「まなざしの先に」映る風景として綴っています。
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デイサービスの実習で出会ったのは、お隣同士に座っていても、言葉を交わすことのない利用者さんたちでした。
わたしの役目は、主役になることではありません。
ふたりのあいだにそっと入り、ちょっとしたきっかけを差し出すこと。
「そのお花、素敵ですね」
「昔はどんなお仕事をされていたんですか?」
そんなひと言が、ふたりの間に芽吹きをもたらし、言葉が行き交うようになっていくのです。
しばらくすると、わたしは静かに一歩下がります。
すると、ふたりのあいだにぽかぽかとした会話が咲いていきました。
わたしはそれをそっと見守るだけ――まるで陽だまりの中、花が自然に開いていくのを見守るように。
この体験は、今の「みんなのひろば」の活動にもつながっています。
初対面どうしの方が、話すきっかけを見つけて、
やがて「また会えたらいいな」と思える関係になっていく。
情報交換の中で、「行ってみたいけどひとりでは勇気が出ない」と思っていた場所へ、
「一緒に行ってみる?」というやさしい言葉が生まれ、
いっしょに参加したあとの感想を、また「ひろば」で話してくれる。
夏のあいだ、「みんなのひろば」は熱中症対策で長いお休みに入ります。
活動をお休みする不安もありましたが、再開のとき――
「(ひろばで知り合った人と)一緒に夏祭りに行ったよ」
「連絡先を交換して、一緒に出かけたの」
そんな声が届いたのです。
わたしたちはつい、「何かしてあげなくちゃ」と思ってしまうけれど、
その思いが強すぎると、人と人が自然に育んでいくつながりの芽を、
知らず知らずのうちに摘んでしまうのかもしれません。
ちょうどいい距離で、そっと見守ること。
手を貸しすぎないこと。
その人が自ら歩き出す瞬間を、信じて待つこと。
関わりすぎず、でも離れすぎず。
そんな「間(ま)」に咲いていく、やさしいつながり。
それは、ほんの少しの“呼び水”から、そっと咲くのです。
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次回もまた、まなざしの先で見つけた風景をお届けします。
※現在、ボランティア基礎講座の参加者を引き続き募集しています。
ご関心のある方は、どうぞお気軽に中原区社会福祉協議会(なかはらボランティアセンター)までお問合せください。